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2016年6月

2016年6月20日 (月)

バベシア症

 バベシア症というのは、犬に極度の貧血、発熱をひき起こして死に至らしめる病気です。

その過程で血尿や黄疸が引き起こされたり、肝不全、腎不全を引き起こすこともあり発症すると速やかな治療が要求される病気です。

 治療薬はあるにはあるのですが、牛用のバベシア症の薬しかないので、それを犬に転用することになります。結構高価な薬なのですが、九州はバベシア症がある地域なので持っている必要があります。

 人体薬で有効とされる薬もあるのですが、牛バベシア症の治療薬よりもより高価で、かつまだ確実に犬のバベシア症に効くというデータの積み重ねがないので常備するハードルは高いです。

 バベシア症はマダニが媒介します。マダニはそれこそ九州には普通におります。草むらに潜んでいるので、犬が草むらで遊ぶのが好きでも自由に遊ばせないほうがいいでしょう。

 治療薬はありますが、完全駆除はむつかしく、体力が衰えたときに再発ということはあり得るそうです。かからせないことが大事です。ノミ・マダニはよい駆除薬があります。

 今年に入ってからは、チュアブルタイプのフィラリア・ノミ・マダニ・一部の内部寄生虫の駆除ができるクスリが発売され、好評です。「あれ?この予防ってしてたか?」と悩むことがないのでよいと思います。

2016年6月 3日 (金)

芽胞菌

芽胞菌「がほうきん」と読みます。一般の人には聞きなれない菌の種類だと思いますが、

「炭疽菌」「破傷風菌」と聞くと「あ、なんかやばい奴だ」と思われると思います。

 芽胞というのはある種の菌が作る「すごく頑丈な殻に包まれたものすごく熱や消毒薬に対して強い状態」です。すごくおおざっぱな説明ですが、たいていの消毒薬では殺すことができません。次亜塩素酸に長時間浸せばある程度の殺菌効果は期待できるかもしれませんが絶対ではありません。熱湯でも芽胞状態だと殺菌できません。火炎放射器なら大丈夫かもしれませんが、一般家庭にはないですね。

 獣医学部時代に微生物学実習で「この菌は何でしょう?」という「菌の正体を探る」実験がありましたが、そういうときでも芽胞菌は絶対使いません。当然ですが病原性が強いものが多いので学生実習ごときで用いるものではないのです。

 しかし、破傷風菌などは土中に普通に存在しています。犬などに噛まれた場合を想定して、私共のような動物医療に携わる人間は破傷風ワクチンを打っておくべきでしょう。

 馬も人同様、感受性が強いのでワクチンを打ちますが、犬や猫は破傷風毒素に対する抵抗性が人や馬よりもはるかに高く、局所の症状にとどまるようです。よって犬や猫は破傷風ワクチンを打つ必要はないです。

 また「芽胞菌」の中には食中毒を起こす菌もあります。「ボツリヌス菌」「ウェルシュ菌」などの名前は聞いたことがあると思います。

 それぞれの芽胞菌が引き起こす症状は激烈です。一つ一つの症状・病名はお調べください。「あ、これ聞いたことある」という名前が出てくると思います。

 ただし、芽胞を作る菌で害がない(というか人にとって有効)な菌もあります。それは納豆菌です。納豆を作るときわらに熱湯をかけますが、それで他の細菌はおおよそ死にますが、納豆菌は芽胞形成しているために熱湯くらいでは死なないのです。

 納豆菌は破傷風菌と同じ属ですが、かたや人に有益、かたや害をなす。不思議なものだと思います。

 動物で芽胞菌が原因という症状はあまり多くないと思います。当院でも確定診断にいたったことはありません(私が見逃しているのかもしれませんが)。しかしおそらく診断は臨床の現場では難しいので専門の検査機関に検査を依頼することになると思います。